抵当権
Contents
1. 抵当権とは何か
抵当権とは、お金を貸した人(抵当権者=債権者)が、借りた人(抵当権設定者=債務者や物上保証人)の不動産を占有・利用させたまま担保にとる権利です。返済されない場合、抵当権者はその不動産を競売にかけて、代金から優先的に弁済を受けられます。

図1:抵当権のしくみ。不動産は設定者が住み続けられるのが質権との大きな違い。
- POINT
質権と違い、抵当権は目的物を引き渡さない(非占有担保)のが最大の特徴。マイホームに住宅ローンの抵当権が付いていても、住み続けられるのはこのためです。
2. 抵当権の4つの性質
抵当権は「主たる債権(お金を貸した権利)」に従う性質を持ちます。この4つは頻出です。
| 性質 | 内容 |
| 付従性 | 債権が成立しなければ抵当権も成立せず、債権が消滅(完済)すれば抵当権も消滅する |
| 随伴性 | 債権が譲渡されると、抵当権もそれに伴って移転する |
| 不可分性 | 債権の一部しか弁済されていなくても、抵当権は目的物全部の上に効力を及ぼし続ける |
| 物上代位性 | 目的物が売却・賃貸・滅失などで金銭に変わった場合、その金銭(売買代金・賃料・保険金など)に対しても抵当権の効力が及ぶ |
- 試験の狙われ方
物上代位は「払渡し又は引渡しの前に差押えをする」必要がある点(民法372条・304条)が繰り返し出題されます。
3. 抵当権の効力が及ぶ範囲
抵当権は建物や土地そのものだけでなく、次のものにも効力が及びます(設定行為に別段の定めがない限り)。

図2:付加一体物・従物・果実(賃料)に及ぶ効力のイメージ
- 付加一体物(増築部分・雨戸など):当然に効力が及ぶ
- 従物(物置・庭石など、抵当権設定当時に存在したもの):判例上、効力が及ぶ
- 果実:通常は及ばないが、債務不履行後に生じた果実(賃料など)には効力が及ぶ
- 土地に抵当権を設定しても、その上の建物には及ばない(土地と建物は別個の不動産)
4. 抵当権の順位
同一不動産に複数の抵当権を設定できます。優先順位は登記の前後で決まります。

図3:登記の順序=弁済を受ける順位。先順位が全額回収してから次順位に回る。
- POINT
抵当権の順位は後順位抵当権者の承諾を得れば変更できます(順位の譲渡・放棄・変更)。順位が上がれば配当額も増える可能性があります。
5. 法定地上権(最重要テーマ)
土地と建物が同一の所有者の場合に、土地または建物の一方(あるいは双方)に抵当権が設定され、競売の結果、土地と建物の所有者が別々になったときに、法律上当然に成立する地上権です。

図4:法定地上権のイメージ。建物を守るための制度で、建物を壊さず使い続けられる。
成立の4要件
- 抵当権設定当時、土地の上に建物が存在すること
- 抵当権設定当時、土地と建物が同一の所有者に属すること
- 土地・建物の一方または双方に抵当権が設定されたこと
- 競売の結果、土地と建物の所有者が別人になったこと
- ひっかけ注意
更地(建物が存在しない土地)に抵当権を設定した後に建物を建てても、法定地上権は成立しません(要件①を満たさないため)。
- 試験の狙われ方
「同一所有者」の判定基準時は抵当権設定時です。設定後に所有者が同じになっても法定地上権は成立しません。
6. 抵当権と賃借権の関係
抵当権が設定された不動産に、賃借人がいる場合の扱いです。対抗力の有無・登記の先後がカギになります。
| ケース | 結論 |
| 賃借権の対抗要件具備が抵当権登記より先 | 賃借人は買受人(競落人)に対抗できる(明渡し不要) |
| 賃借権の対抗要件具備が抵当権登記より後 | 原則、買受人に対抗できず明渡しが必要 |
| 後順位でも一定要件を満たす場合 | 建物明渡猶予制度により、競売手続の開始が買受人に知れた時から6か月間は明渡しが猶予される |
- POINT
「登記の先後」で勝負が決まるのが民法の基本ルール。対抗要件(引渡し・登記など)を先に備えた方が強い、という原則をここでも当てはめます。
7. 抵当権の消滅:代価弁済・抵当権消滅請求
① 代価弁済
抵当不動産を買い受けた第三者(第三取得者)が、抵当権者の請求に応じてその代価を抵当権者に弁済すると、抵当権はその第三者のために消滅します。
② 抵当権消滅請求
第三取得者側から、抵当権者に対して自ら評価額を提示し、それを承諾してもらうことで抵当権を消滅させる制度です(代価弁済とは逆に、第三取得者側から動く点がポイント)。
- 用語の混同に注意
代価弁済=抵当権者の請求に第三取得者が応じる/抵当権消滅請求=第三取得者が自ら申し出る。主導権が逆になる点で区別しましょう。
8. 根抵当権のポイント
根抵当権は、一定の範囲に属する不特定の債権を、極度額を限度として担保する抵当権です。継続的な取引(当座貸越など)で繰り返し発生する債権をまとめて担保するのに使われます。
- 普通の抵当権のような付従性・随伴性がない(元本確定前は個々の債権が消滅しても根抵当権は消えない)
- 元本確定により、担保すべき債権が具体的に固まる
- 極度額の変更には利害関係人の承諾が必要
9. 一問一答チェック
Q1. 抵当権は目的物の占有を抵当権者に移す必要がある?
A. ✕ 誤り。抵当権は非占有担保であり、設定者が使用収益を続けられる。
Q2. 更地に抵当権を設定した後に建物を建てた場合、法定地上権は成立するか?
A. ✕ 成立しない。抵当権設定当時に建物が存在していないため。
Q3. 抵当権設定登記後に対抗要件を備えた賃借権者は、買受人に当然に対抗できるか?
A. ✕ 原則対抗できない。ただし建物明渡猶予制度により6か月間は猶予される場合がある。
Q4. 物上代位を行うには、目的物の売却代金等が債務者に払い渡される前に何をする必要があるか?
A. 差押えをする必要がある。
Q5. 抵当権消滅請求は誰から動き出す制度か?
A. 第三取得者側から評価額を提示して動き出す(代価弁済とは逆)。